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zoom RSS 「少子社会日本 もうひとつの格差のゆくえ」読了

<<   作成日時 : 2008/02/23 23:48   >>

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岩波新書の「少子社会日本 もうひとつの格差のゆくえ」を読み終わりました。

著者は、少子化の原因となる出産の減少の、その原因となる結婚について、従来から結婚意欲は衰えていないとしてきして、それなのに、なぜ出産が増えないのかという観点から論立てを進めていきます。
そして、現在の状況について、著者は「子どもをもつ女性が働きやすい環境が整う前に、若者がまともな収入を稼いで生活できる仕事自体が失われてしまったのだ。
そのつけが、予想以上に進行し続ける少子化、そして、人口減少として回ってきているのが現在の姿である。
」(6頁)
まさに、日本の1990年代は、少子化対策の失われた10年といってよい。経済に関しては、失われた10年といっても、回復は可能である。しかし、人口は違う。人間は生き物である。団塊ジュニア世代を若返らせることはできないのだ。もう日本は、少子化、そして、人口減少につき合って進むしか道はなくなっている。」(7頁)
少子化の原因について、著者は単一の要因に還元できないとしつつ敢えて、女性の社会進出の進展がではなく、「日本においては、社会経済が構造変動している中で、女性の社会進出が不十分であるため、少子化が欧米のように止められずに、深刻化した」(10頁)と主張している。
また、「今起こっている少子化が、地域格差と家族格差を伴った少子化」(23頁)だとしている。

そして、
日本社会の少子化の主因を、@「若年男性の収入の不安定化」とA「パラサイト・シングル現象」の合わせ技」(10頁)だとし、具体的には、「1990年代後半のニューエコノミーの浸透による「男性収入の不安定化」こそが未婚者の結婚意欲を削ぐのと同じような形で作用して、結婚した若者の出産意欲を削いでいるのだ。」「男女共同参画が進む前に、ニューエコノミーが進展したという日本における事情が影響している」(166頁)
という認識を元に、
現在行われている仕事と育児の両立支援策では、「少数の」高学歴で能力のある女性は、結婚、出産、子育てしやすい環境が整えられるが、スキルのない女性にとっては、かえって、結婚、出産、子育てがしにくい状況に放置され、現実に子どもが生まれると、困難な状況に陥る(アルバイトはできないし、夫の収入も少ない)」(206頁)
という政策ではなく、
キャリアではない仕事に従事している女性が、高収入でない男性と結婚して、そこそこ豊かな生活を送るための条件を整えることが必要」(219頁)だとして、具体的には、
@全若者に、希望がもてる職につけ、将来も安定収入が得られる見通しを
Aどんな経済状況の親の元に生まれても、一定水準の教育が受けられる保証を
B格差社会に対応した男女共同参画を
C若者にコミュニケーション力をつける機会を
」(208頁以下)つまり、
若者が希望をもてる環境を用意することが根本的な少子化対策」(213頁)が必要だと述べ、
結婚や出産したくてもできないような経済環境に若者を放置していることが問題なのであって、そのような状況でいくら精神論を振りかざしても何も問題は解決しない」(222頁)ことを強調しています。

当然、精神論でなんとかなるなんてことを思っている人はいないでしょう(いや、いるのか?)。

で、他の研究者からは経済決定論者と呼ばれるらしい著者なのだそうですが、個人的には、それほど違和感なく、そうだろうな〜と読み終わった次第。

結構説得力があったと思いますが、ただ、使われているアンケートなどのデータの適否までは私には解らないので、そのあたりでいろいろ議論があり得るのかも知れません。

あと、個人的メモ

地方については、
現在、地方分権など、地域の自立を求める風潮が強いが、「移動」を考慮すると、少子化のデメリットを地域内部で解決することは現実的でない」(40頁)として、具体的には
若者の人口が減り、残った若者も経済力がなく、また、消費が期待できない高齢者が多数となる地域が出現する。このような地区を活性化させたり、それが無理なら、効率的に維持するための対策を行う必要がある。このような地区では、自立的な活性化を求めるのは無理であろう。「移動の自由」がある限り、そのような地域で生まれ活力がある若者は、活力のある地域に行って自分の能力を使うことを選択するだろう。お金がある高齢者は、サービスが充実している地区に移住するだろう。少なくとも、これらの行動を止めることはできない。」(198頁)と述べている。

現在の20歳男性が長男をもつ確率は五割を切る。・・・従来の先祖代々のお墓というのは、50年後には半減し、多くの無縁墓が残されるだろう」(42頁)

30代で仕事をもつ独身女性は増えている。しかし、それは、未婚化の原因というよりも、「結果」であると考えた方がよい」(44頁)


35歳を超すと、収入差による男性未婚率の差が顕著になる。どんな調査を行っても、男性未婚率の差は、年収によって、ほぼ説明できてしまう」(108頁)という少子化のタブーの一つの経済格差について、
「「結婚は愛情が高まってするものであり、お金のことを考えてはいけない」という神話を守ろうとする圧力と、現実に若年男性の収入格差が拡大し始めているという事実を認めたくないという圧力によるものだろう。しかし、この事実を認めなかったために、少子化対策が10年遅れたと私は思っているのだが」(62頁)


目次
序章 少子社会日本の幕開け
第1章 日本の少子化は、いま
1 少子化の深刻化・四点セット
2 家族格差と地域格差を伴った少子化
3 なぜ少子化が社会問題なのか
第2章 家族の理想と現実
1 結婚・出産意欲が衰えたのか
2 家族の重要性の高まり
第3章 少子化の原因を探るにあたって
1 少子化をめぐるタブー
2 戦後日本社会と少子化
第4章 生活期待と収入の見通し
1 子どもを生み育てる経済的条件
2 高度成長期の安定出生率――1955〜75年
第5章 少子化はなぜ始まったのか―一九七五〜九五年
1 低成長期と経済見通しの変化
2 パラサイト・シングルの誕生
3 欧米での対応
第6章 少子化はなぜ深刻化したのか―一九九五年〜
1 ニューエコノミーの浸透
2 未婚化の更なる進展
3 夫婦の産み控え
第7章 恋愛結婚の消長
1 恋愛と結婚の根本変化
2 恋愛結婚の普及期――1980年以前
3 恋愛と結婚の分離と魅力格差――1980年以降
4 「できちゃった婚」の増大
第8章 少子化対策は可能か
1 少子化対策の課題は何か
2 少子化を反転させることは可能か
3 希望格差対策としての少子化対策
あとがき


2002年度以降コピーを取って、あるいは印刷して読んだ論文等

辻山幸宣 地方自治改革の出発点−分権改革を地方自治に活かすために−「自治・分権システムの可能性」(自治総研叢書10 今村都南雄編著 敬文堂)2000年10月

はじめに
1 地方自治はどこへ向かう
2 機関委任事務制度廃止の意味−「自治体で処理する事務はすべて自治体の事務
である」−
3 国の関与の法定化の意味−「国の機関」から「自治体の行政機関」へ−
4 機関委任事務と法定受託事務の違い
5 都道府県と市町村の関係について
6 二元代表制をどう考える−条例と規則をめぐって−
7 自己決定とはどういうことか−異なる意見の調整−
おわりに

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
職種が安定している公務員にたくさん子供を産んでほしい
ネッチン
2008/03/02 19:29
防衛的な私立進学が必要な現在、子供は膨大な金がかかります。
産休・育休のとりやすさなど直接的な話の次に、教育の質の向上が必要だと思います。
so
2008/09/25 00:52

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