しがない地方公務員のメモ帳

アクセスカウンタ

zoom RSS 「日本の医療行政 その歴史と課題」読了

<<   作成日時 : 2008/03/02 00:40   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 0

画像


日本の医療行政 その歴史と課題」を読み終わりました。

終章で述べられているように本書は「主として衛生行政としてスタートした医療行政の歴史的変遷」が取りあげられています。
そして、「医療や医療行政を様々な角度からみてゆくと、そこには必ずといってよいほど歴史的痕跡が発見される。したがって、本書では、歴史的視点に立ちつつ、医療行政の背後にある医療文化や行政文化を強く意識しながら」医療行政について述べられています。

1999年出版ですから、ちょっと古いのですが、このような歴史的な視点からの記述ですので、医療行政に明るくない人には、入門書として現在でも通用するものだと思います。

で、あとは個人的なメモ

現代の日本においても、医療供給体制の中核は開業医制である。江戸時代を通じて確立された開業医制は今日の医療体制の原型をなしている。開業医の中心となった漢方医の中には、医家の下で医術を学んだ者もあれば、儒学を通じて医書から医師の心得を習得した者もあった。」(3頁)

明治十年代を通じてコレラが蔓延するごとに「衛生警察」が前面に出て膨張する一方、「自治衛生」の芽は容易に育たなかった。そして「自治衛生」の育成をめざす長与ら内務省衛生局を震撼させたのが明治十九年の地方官官制の制定である。同官制の公布により、衛生委員は廃止され、各府県の衛生課は事実上業務停止に追い込まれた。衛生行政事務の多くが警察行政に組み込まれたのである。これを長与は「十九年の頓挫」と呼んだ」(50頁)

国保が最初議論の的となった頃、農家の医療費負担の軽減や医師の確保が考慮されたことは確かである。国保に当初政府が農村対策を期待したことは否定できないが、法案化が進むにつれ、しだいに国家の軍事的要請から健兵の養成へと関心が向けられるようになった」(92頁)

この時代に医療保険はほぼ完全に国、すなわち厚生省の統制下に置かれ、医療システムそのものから市場原理が排除された。こうした医療制度を背景から支えた医療行政の体質は戦時体制、占領期を経て戦後にまで持ち越された部分が少なくない。」(93頁)

明らかに医療保険の最大の推進要因は太平洋戦争であった。戦時体制下に現代の医療保険制度の基盤ができたといっても過言ではない」(99頁)

日本の医療保険は給付面で大変すぐれている。保険による差別はなく、国民は皆平等に医療が受けられる。患者がどの保険に加入しているかにかかわりなく、保険証一枚で同様の医療サービスを享受できる。また患者が保険とは無関係に自由に好きな医療機関を選んで受診できるというのも魅力的である」(102頁)

最大のデメリットは医療側、患者側双方に診療に対する無責任な姿勢を生んでいることであろう」(103頁)

今日に連なる日本の医療界の伝統は、繰り返し述べてきた自由開業医制と半ば特権的な東京大学医学部の創設によって形づくられた」(117頁)

病院は大学に従属する機関として独自性を発揮できない構造がつくりあげられた。官公立病院や民間病院が独自に医師を養成できないこともあって、大半の病院が大学病院に系列化され、医師の供給を医学部に要請した。ここに医局講座制が医療界を席巻する原点が生まれた」(117頁)

国の医療政策は医師会の圧倒的な影響の下で、公的医療機関を抑制し民間病院を法的に優遇する方針を採った。・・・多くの先進諸国では公的医療機関が中心であるのに対し、日本では民間病院の占める割合が異常に高い。五十五年体制下に長期政権を維持した自民党が有力な圧力団体である日本医師会の支持をとりつけ、その主張を政策に反映してきたからにほかならない」(129頁)

旧医専がありその卒業生が地元に定着する地域では医師の供給が概ねスムーズにいっているようである。もちろん国が診療報酬体系のように医師の供給にについても統制を加えれば事態は容易に解消するであろう。だが、わが国には伝統的に自由開業医制の風土があって医療サービスは私的供給が原則であるから、そう簡単にはゆかないであろう。」(145頁)

わが国の医療構造の特色は、公的財政と私的供給の並立という点に求められる」(213頁)

医療サービスの問題は結局のところ人と財政の問題に還元される」(214頁)


目次

第1章 「医制」の制定―わが国医療行政の原点
江戸時代の医療/医薬分業と医療行政の開始/「医制」の制定過程/
医療観の変化と医療制度/医師の養成/西洋医と漢方医/薬剤師の誕生/「医制」と長与専斎

第2章 内務省衛生局と長与専斎
コレラと医療行政/長与専斎と「衛生意見」/もう一つの障壁ー治外法権/民衆への啓蒙/環境衛生の推進/「衛生警察」と「自治衛生」の相剋

第3章 後藤新平と医療行政
衛生行政への開眼/後藤新平と内務省衛生局/ドイツ留学と衛生行政/衛生局長時代の後藤/社会政策への道/伝染病予防法の成立

第4章 医療保険制度の展開
社会保険の登場/健康保険法の運用/昭和初期の健保制度/国民健康保険の誕生/医療の社会化/国民皆保険へ/医療保険制度の現況/高齢者医療への取り組み/新たな医療保険制度

第5章 医療機関の発展―その量と質
独自性に欠ける日本の病院/戦時体制下の病院/戦後改革と医療法/医療機関の急増とその問題点/変化する病院医療

第6章 大学医学部と医療行政
高度医療への幻想/医局講座制の来歴/医学部の変容と医療行政/二十一世紀の大学と医療

第7章 薬事行政の展開
不合理な日本のクスリ社会/停滞する医薬分業/医薬分業と日本医師会/厚生省の積極姿勢/改革を迫られる薬事行政/膨れ上がる薬剤費の内実/薬害への取り組み/薬害エイズ事件の教訓

第8章 厚生省と医療政策
高騰をつづける医療費/医療費の決定過程/医療費抑制の断行/利害調整の上に成り立つ医療制度/政治家の兆し再び

第9章 先端医療の衝撃
臓器移植の再開/国民病・がん医療への取り組み/遺伝子技術の応用とその行方/生命倫理と法、そして行政

終章 今後の課題と展望



2002年度以降コピーを取って、あるいは印刷して読んだ論文等

自治基本条例の制定状況 / 小西敦 住民行政の窓. (通号 314) [2007.12]

はじめに
一 自治基本条例とは
二 自治基本条例制定の活発な動き
三 なぜ、地方公共団体は自治基本条例の制定に前向きか
(1) 住民の参加・協働によるまちづくりの必要性の認識
(2) 「第一次地方分権改革」の影響
(3) 市町村合併の進展の影響
おわりに

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
「日本の医療行政 その歴史と課題」読了 しがない地方公務員のメモ帳/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる