「奈良県、補助金7億5千万円返還へ 事務のミス」だそうです
2007年03月01日のasahi.comによれば、
奈良県が私立学校や私立幼稚園の運営費に関する文部科学省の補助金を01~04年度、計約7億5470万円過大に受け取っていたことが1日、わかった。県の事務手続きミスが原因で、返還のための補正予算案を県議会の2月定例会に提出する。
(略)
会計検査院の調査で判明した。文科省は「悪質性はない」として、加算金を追加しないという。
http://www.asahi.com/national/update/0301/OSK200703010080.html
とのことです。
まあ、国(文部科学省)と県との間については、いわゆる「適化法」(補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律)17条1項の規定により、国(文部科学省)が奈良県への補助金交付決定の一部を取り消しし(01~04年度分ということで既に確定はされているのでしょうが、17条3項を適用して取り消すということでしょうね)、18条1項の規定により返還命令を出すけれども、加算金については19条3項の規定によりやむ得ない事情があると認めて免除するということなのでしょうね・・・。
まあ、やむを得ない事情がなんなのかよくわかりませんが、国(文部科学省)も確定のミスをしている訳ですから、実績報告の何をチェックしていたんだ?って問題はあるわけですが・・・。
記事が正しいなら、奈良県のミスって実績報告で気が付きそうな内容ですよね・・・。
なので、そのあたりがやむを得ない事情ってことになるのかもしれませんが、今ひとつ釈然としない・・・。
というのが、そもそも交付申請の内容はどうなっていたのでしょうか?
奈良県が交付申請の段階から、(後からミスだと指摘されている)内容の交付申請をしていたのだとしたら、そして当該交付申請の内容で国が交付決定をしているのだとしたら、そもそも国は適化法17条1項の規定による取消ができるんでしょうか・・・。
だって
「補助金等の他の用途への使用をし、その他補助事業等に関して補助金等の交付の決定の内容又はこれに附した条件その他法令又はこれに基く各省各庁の長の処分に違反したとき」
という要件を満たしていないと思われるのですが・・・。
そのあたりが、どうだったのか、とても気になるところではあります。
感覚的には、交付申請の内容と実績報告の内容が大きく違うってことはあまりないんじゃないかと思うんですがね~。
国(文部科学省)の側のミスの後始末を奈良県がさせられているような気がするのは私だけでしょうか・・・。まあ、お金を出す側が強いってことなんでしょうかね~。
補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律
(決定の取消)
第十七条 各省各庁の長は、補助事業者等が、補助金等の他の用途への使用をし、その他補助事業等に関して補助金等の交付の決定の内容又はこれに附した条件その他法令又はこれに基く各省各庁の長の処分に違反したときは、補助金等の交付の決定の全部又は一部を取り消すことができる。
2 各省各庁の長は、間接補助事業者等が、間接補助金等の他の用途への使用をし、その他間接補助事業等に関して法令に違反したときは、補助事業者等に対し、当該間接補助金等に係る補助金等の交付の決定の全部又は一部を取り消すことができる。
3 前二項の規定は、補助事業等について交付すべき補助金等の額の確定があつた後においても適用があるものとする。
4 第八条の規定は、第一項又は第二項の規定による取消をした場合について準用する。
(補助金等の返還)
第十八条 各省各庁の長は、補助金等の交付の決定を取り消した場合において、補助事業等の当該取消に係る部分に関し、すでに補助金等が交付されているときは、期限を定めて、その返還を命じなければならない。
2 各省各庁の長は、補助事業者等に交付すべき補助金等の額を確定した場合において、すでにその額をこえる補助金等が交付されているときは、期限を定めて、その返還を命じなければならない。
3 各省各庁の長は、第一項の返還の命令に係る補助金等の交付の決定の取消が前条第二項の規定によるものである場合において、やむを得ない事情があると認めるときは、政令で定めるところにより、返還の期限を延長し、又は返還の命令の全部若しくは一部を取り消すことができる。
(加算金及び延滞金)
第十九条 補助事業者等は、第十七条第一項の規定又はこれに準ずる他の法律の規定による処分に関し、補助金等の返還を命ぜられたときは、政令で定めるところにより、その命令に係る補助金等の受領の日から納付の日までの日数に応じ、当該補助金等の額(その一部を納付した場合におけるその後の期間については、既納額を控除した額)につき年十・九五パーセントの割合で計算した加算金を国に納付しなければならない。
2 補助事業者等は、補助金等の返還を命ぜられ、これを納期日までに納付しなかつたときは、政令で定めるところにより、納期日の翌日から納付の日までの日数に応じ、その未納付額につき年十・九五パーセントの割合で計算した延滞金を国に納付しなければならない。
3 各省各庁の長は、前二項の場合において、やむを得ない事情があると認めるときは、政令で定めるところにより、加算金又は延滞金の全部又は一部を免除することができる。
しかし、こうなると奈良県と補助金交付先の私学の間が気になりますが、奈良県は私学に対して補助決定の取り消しをして返還命令を出すのでしょうか・・・。
でも、奈良県補助金等交付規則15条1項によれば、交付決定を取り消せるのは、
「補助金等の他の用途への使用をし、その他補助事業等に関して補助金等の交付の決定の内容又はこれに付した条件その他法令等又はこれに基づく知事の処分に違反したとき」
とされていますから、補助金を受けた私学がこれらの要件に該当していなければ、奈良県は交付決定の取消し→返還命令という方向に持っていくことはできないでしょう。
そして、おそらく本件については、国の補助金交付要件(おそらく要綱があるのでしょう)と奈良県の補助金交付要件(同じく要綱があるのでしょう)との間に乖離があり、そしてそのことに会計検査院の調査があるまで、国も奈良県も気が付かなかったのではないでしょうか?
もし、そうだとすれば、先ほどの奈良県補助金等交付規則15条1項の規定による交付決定の取り消しはできないことになり、当然、それを根拠にした返還命令も出せないでしょう。
ただ、実質的に負担付贈与であるに過ぎない補助金の交付決定について、適化法が処分性を認めている(いわゆる形式的行政処分説を取るかどうかは別として)のと異なって、おそらく今回の奈良県による交付決定について、奈良県は処分性を認めてはいないでしょうから(たぶん)
(根拠規範が条例であるとか、当該条例で行政不服審査法による不服申立を認めているとかしない限り、つまり単なる要綱補助に過ぎない限り、奈良県補助金等交付規則がたとえ「交付決定」といった行政処分であるかのような表現をしているとしても、当該交付規則そのものは規制規範に過ぎないので、処分性が認められることはないではないでしょうか)
、そもそもの私学に対する奈良県の補助金交付決定、つまり負担付贈与契約の申込に対する承諾に要素の錯誤(民法95条)があったとして、補助金交付決定=負担付贈与契約の承諾は無効だと言う主張はできないのでしょうか?
(ってのは、かなり無理があるか~。県に重過失ありって言われそうだな・・・)
もし、仮にそのような無効の主張が可能であれば、無効部分に係る補助金については、不当利得返還請求によって私学から回収できるのかな~と思ったり(といっても私学側が善意なら現存利益だけしか戻ってこないかもしれませんが・・・)。
まあ、なんにせよ、ちょっと七億円は太いですよね・・・。
やはり、この部分については、住民監査請求、住民訴訟の可能性もあるのでしょう・・・。
そして、碓井「要説住民訴訟と自治体財務」改訂版によれば、自治法242条の2第1項4号のいわゆる新四号訴訟については、
「財務会計行為について本来的権限を有する者と、委任又は専決による行為者との双方が「当該職員」となりうることが、判例として確定されていた」(110ページ)
わけですから、当該職員さんは、夜も眠れないんだろうな~。
奈良県補助金等交付規則
(決定の取消し)
第十五条 知事は、補助事業者等が、補助金等の他の用途への使用をし、その他補助事業等に関して補助金等の交付の決定の内容又はこれに付した条件その他法令等又はこれに基づく知事の処分に違反したときは、補助金等の交付の決定の全部又は一部を取り消すことができる。
2 知事は、間接補助事業者等が、間接補助金等の他の用途への使用をし、その他間接補助事業等に関して法令等に違反したときは、補助事業者等に対し、当該間接補助金等に係る補助金等の交付の決定の全部又は一部を取り消すことができる。
3 前二項の規定は、補助事業等について交付すべき補助金等の額の確定があった後においても適用があるものとする。
4 第六条の規定は、第一項又は第二項の処分をした場合について準用する。
民法
(錯誤)
第九十五条 意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。
2002年度以降コピーを取って、あるいは印刷して読んだ論文等
碓井光明 地方公共団体の附属機関等に関する若干の考察(上)附属機関条例設置主義を中心として / 自治研究. 82(11) (通号 993) [2006.11]
一 はじめに
ニ 四事件の概要
一 越谷市事件
ニ 福岡地裁ニ五号事件判決
三 福岡地裁四ニ号事件判決
四 名古屋市事件
三 附属機関等にかんするこれまでの議論と地方公共団体の動向
一 附属機関等に関する議論
ニ 要綱・指針等による対応
三 附属機関の必置制の緩和
四 附属機関等の実態
奈良県が私立学校や私立幼稚園の運営費に関する文部科学省の補助金を01~04年度、計約7億5470万円過大に受け取っていたことが1日、わかった。県の事務手続きミスが原因で、返還のための補正予算案を県議会の2月定例会に提出する。
(略)
会計検査院の調査で判明した。文科省は「悪質性はない」として、加算金を追加しないという。
http://www.asahi.com/national/update/0301/OSK200703010080.html
とのことです。
まあ、国(文部科学省)と県との間については、いわゆる「適化法」(補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律)17条1項の規定により、国(文部科学省)が奈良県への補助金交付決定の一部を取り消しし(01~04年度分ということで既に確定はされているのでしょうが、17条3項を適用して取り消すということでしょうね)、18条1項の規定により返還命令を出すけれども、加算金については19条3項の規定によりやむ得ない事情があると認めて免除するということなのでしょうね・・・。
まあ、やむを得ない事情がなんなのかよくわかりませんが、国(文部科学省)も確定のミスをしている訳ですから、実績報告の何をチェックしていたんだ?って問題はあるわけですが・・・。
記事が正しいなら、奈良県のミスって実績報告で気が付きそうな内容ですよね・・・。
なので、そのあたりがやむを得ない事情ってことになるのかもしれませんが、今ひとつ釈然としない・・・。
というのが、そもそも交付申請の内容はどうなっていたのでしょうか?
奈良県が交付申請の段階から、(後からミスだと指摘されている)内容の交付申請をしていたのだとしたら、そして当該交付申請の内容で国が交付決定をしているのだとしたら、そもそも国は適化法17条1項の規定による取消ができるんでしょうか・・・。
だって
「補助金等の他の用途への使用をし、その他補助事業等に関して補助金等の交付の決定の内容又はこれに附した条件その他法令又はこれに基く各省各庁の長の処分に違反したとき」
という要件を満たしていないと思われるのですが・・・。
そのあたりが、どうだったのか、とても気になるところではあります。
感覚的には、交付申請の内容と実績報告の内容が大きく違うってことはあまりないんじゃないかと思うんですがね~。
国(文部科学省)の側のミスの後始末を奈良県がさせられているような気がするのは私だけでしょうか・・・。まあ、お金を出す側が強いってことなんでしょうかね~。
補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律
(決定の取消)
第十七条 各省各庁の長は、補助事業者等が、補助金等の他の用途への使用をし、その他補助事業等に関して補助金等の交付の決定の内容又はこれに附した条件その他法令又はこれに基く各省各庁の長の処分に違反したときは、補助金等の交付の決定の全部又は一部を取り消すことができる。
2 各省各庁の長は、間接補助事業者等が、間接補助金等の他の用途への使用をし、その他間接補助事業等に関して法令に違反したときは、補助事業者等に対し、当該間接補助金等に係る補助金等の交付の決定の全部又は一部を取り消すことができる。
3 前二項の規定は、補助事業等について交付すべき補助金等の額の確定があつた後においても適用があるものとする。
4 第八条の規定は、第一項又は第二項の規定による取消をした場合について準用する。
(補助金等の返還)
第十八条 各省各庁の長は、補助金等の交付の決定を取り消した場合において、補助事業等の当該取消に係る部分に関し、すでに補助金等が交付されているときは、期限を定めて、その返還を命じなければならない。
2 各省各庁の長は、補助事業者等に交付すべき補助金等の額を確定した場合において、すでにその額をこえる補助金等が交付されているときは、期限を定めて、その返還を命じなければならない。
3 各省各庁の長は、第一項の返還の命令に係る補助金等の交付の決定の取消が前条第二項の規定によるものである場合において、やむを得ない事情があると認めるときは、政令で定めるところにより、返還の期限を延長し、又は返還の命令の全部若しくは一部を取り消すことができる。
(加算金及び延滞金)
第十九条 補助事業者等は、第十七条第一項の規定又はこれに準ずる他の法律の規定による処分に関し、補助金等の返還を命ぜられたときは、政令で定めるところにより、その命令に係る補助金等の受領の日から納付の日までの日数に応じ、当該補助金等の額(その一部を納付した場合におけるその後の期間については、既納額を控除した額)につき年十・九五パーセントの割合で計算した加算金を国に納付しなければならない。
2 補助事業者等は、補助金等の返還を命ぜられ、これを納期日までに納付しなかつたときは、政令で定めるところにより、納期日の翌日から納付の日までの日数に応じ、その未納付額につき年十・九五パーセントの割合で計算した延滞金を国に納付しなければならない。
3 各省各庁の長は、前二項の場合において、やむを得ない事情があると認めるときは、政令で定めるところにより、加算金又は延滞金の全部又は一部を免除することができる。
しかし、こうなると奈良県と補助金交付先の私学の間が気になりますが、奈良県は私学に対して補助決定の取り消しをして返還命令を出すのでしょうか・・・。
でも、奈良県補助金等交付規則15条1項によれば、交付決定を取り消せるのは、
「補助金等の他の用途への使用をし、その他補助事業等に関して補助金等の交付の決定の内容又はこれに付した条件その他法令等又はこれに基づく知事の処分に違反したとき」
とされていますから、補助金を受けた私学がこれらの要件に該当していなければ、奈良県は交付決定の取消し→返還命令という方向に持っていくことはできないでしょう。
そして、おそらく本件については、国の補助金交付要件(おそらく要綱があるのでしょう)と奈良県の補助金交付要件(同じく要綱があるのでしょう)との間に乖離があり、そしてそのことに会計検査院の調査があるまで、国も奈良県も気が付かなかったのではないでしょうか?
もし、そうだとすれば、先ほどの奈良県補助金等交付規則15条1項の規定による交付決定の取り消しはできないことになり、当然、それを根拠にした返還命令も出せないでしょう。
ただ、実質的に負担付贈与であるに過ぎない補助金の交付決定について、適化法が処分性を認めている(いわゆる形式的行政処分説を取るかどうかは別として)のと異なって、おそらく今回の奈良県による交付決定について、奈良県は処分性を認めてはいないでしょうから(たぶん)
(根拠規範が条例であるとか、当該条例で行政不服審査法による不服申立を認めているとかしない限り、つまり単なる要綱補助に過ぎない限り、奈良県補助金等交付規則がたとえ「交付決定」といった行政処分であるかのような表現をしているとしても、当該交付規則そのものは規制規範に過ぎないので、処分性が認められることはないではないでしょうか)
、そもそもの私学に対する奈良県の補助金交付決定、つまり負担付贈与契約の申込に対する承諾に要素の錯誤(民法95条)があったとして、補助金交付決定=負担付贈与契約の承諾は無効だと言う主張はできないのでしょうか?
(ってのは、かなり無理があるか~。県に重過失ありって言われそうだな・・・)
もし、仮にそのような無効の主張が可能であれば、無効部分に係る補助金については、不当利得返還請求によって私学から回収できるのかな~と思ったり(といっても私学側が善意なら現存利益だけしか戻ってこないかもしれませんが・・・)。
まあ、なんにせよ、ちょっと七億円は太いですよね・・・。
やはり、この部分については、住民監査請求、住民訴訟の可能性もあるのでしょう・・・。
そして、碓井「要説住民訴訟と自治体財務」改訂版によれば、自治法242条の2第1項4号のいわゆる新四号訴訟については、
「財務会計行為について本来的権限を有する者と、委任又は専決による行為者との双方が「当該職員」となりうることが、判例として確定されていた」(110ページ)
わけですから、当該職員さんは、夜も眠れないんだろうな~。
奈良県補助金等交付規則
(決定の取消し)
第十五条 知事は、補助事業者等が、補助金等の他の用途への使用をし、その他補助事業等に関して補助金等の交付の決定の内容又はこれに付した条件その他法令等又はこれに基づく知事の処分に違反したときは、補助金等の交付の決定の全部又は一部を取り消すことができる。
2 知事は、間接補助事業者等が、間接補助金等の他の用途への使用をし、その他間接補助事業等に関して法令等に違反したときは、補助事業者等に対し、当該間接補助金等に係る補助金等の交付の決定の全部又は一部を取り消すことができる。
3 前二項の規定は、補助事業等について交付すべき補助金等の額の確定があった後においても適用があるものとする。
4 第六条の規定は、第一項又は第二項の処分をした場合について準用する。
民法
(錯誤)
第九十五条 意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。
2002年度以降コピーを取って、あるいは印刷して読んだ論文等
碓井光明 地方公共団体の附属機関等に関する若干の考察(上)附属機関条例設置主義を中心として / 自治研究. 82(11) (通号 993) [2006.11]
一 はじめに
ニ 四事件の概要
一 越谷市事件
ニ 福岡地裁ニ五号事件判決
三 福岡地裁四ニ号事件判決
四 名古屋市事件
三 附属機関等にかんするこれまでの議論と地方公共団体の動向
一 附属機関等に関する議論
ニ 要綱・指針等による対応
三 附属機関の必置制の緩和
四 附属機関等の実態
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